AIの苦手なこと

AIの苦手なこと

今回はAIの特性についてお話をしたいと思います。

半導体工場の MES(製造実行システム)では、私は試作品の工程管理業務を担当していました。
契約終了時点では、製品の本工程だけでも 100 工程から多いものでは 4,000 工程に達し、さらに「条件出し」と呼ばれるサブルートも、日によっては数十件単位で登録・修正・削除を行う必要がありました。

その後、インテグレーション部門からの作業指示書どおりに工程が登録されているか、またシステム上のルールに矛盾がないかを確認します。チェック項目の数は、工程数や登録内容によって変わりますが、多いときには数千項目に及びます。

以前は工程数が少なかったため、目視や VBA マクロを使ってチェックしていましたが、それでも数か月に一度は登録ミスを起こし、周囲に迷惑をかけてしまうことがありました。
現在では工程数の増加とチェック作業の負荷、そしてミスのリスクを減らすために、内製システムが導入され、自動で登録が行われるようになっています。
内製システムは登録した工程をルールエンジンで処理をおこない、登録可否を判断しています。
ただ、ルールエンジンも複数の判断条件が重なると、チェックが抜けることがあり代替としてAIで処理を行うことができないかと思い検証を行ってみたことがありました。

AIをルールエンジンとして使うためにチェックさせたい工程表(EXCEL形式)と判定ルールをテキスト化したファイルをプロンプト入力欄にアップロードします。
アップロード確認後に、アップロードしたファイルを実行させるプロンプトを入力します。

プロンプト「アップロードしたファイルの工程表上から順番に判定ルールの記述に沿ってチェックを行ってください。間違っていれば、間違った個所を表示してください。判定ルール以外の判断は行わないでください」

最初は、1項目につき1つだけ判定ルールを設定してチェックしていたため、正しく判定できていました。
しかし、1項目に複数の判定ルールを設定してチェックしたところ、今度は判定の抜けが発生しました。
再現性を確認するために同じルールで何度かチェックを行いましたが、1回目はAルールが抜け、2回目はCルールが抜けるなど、毎回異なる結果となり、再現性がありませんでした。
抜け方を見ていると、まるで人間がチェック漏れをしているような不規則さがあり、原因の特定が難しい状況です。

判定ルールで一番最初のルールであれば正しい判定をおこなってもらえますが、複数の条件になるとあいまいになります。
こういう日本語表記だとダメなのかと思い、論理構造のIF~THEN文に変換してもらって処理を行いましたが結果は同じで改善が見込めず断念をしたことがあります。

AIがこういう論理的な処理ができない理由をうまく書けないので、AIさんに以下を解説していただきました。

生成AIをルールエンジンとして利用した検証結果について

本検証では、Excel形式の工程データに対し、
複数のIF条件による整合性チェックを生成AIに実行させる試みを行った。

チェック内容は以下のような論理式である。

  • IF D項目 = “C” THEN C項目の先頭文字 = “C”
  • IF D項目 = “W” AND B項目に “WWW” を含む THEN C項目の先頭文字 = “W”
  • IF D項目 = “W” AND B項目に “SSS” を含む THEN C項目の先頭文字 = “S”
  • IF D項目 = “W” AND B項目に “BBB” を含む THEN C項目の先頭文字 = “B”
  • IF D項目 = “L” AND B項目に “AAA” を含む THEN C項目の先頭文字 = “K”
  • IF D項目 = “L” AND B項目に “PPP” を含む THEN C項目の先頭文字 = “P”

これらは本来、決定論的に評価されるべき条件式であり、
同一入力に対しては常に同一結果が出力される必要がある。

しかし複数回の検証の結果、以下の事象が確認された。

  • チェック漏れが発生する
  • 漏れ箇所が毎回異なる
  • 全件網羅の保証が得られない

この原因は、生成AIが論理式を「計算」として処理しているのではなく、
自然言語として「意味解釈・推論」しているためである。

生成AIは確率的モデルであり、

  • 条件の優先順位
  • AND条件の同時評価
  • 類似パターンの識別
  • 大量データの逐次評価

といった決定論的処理を保証する設計にはなっていない。

そのため、同一データを与えても毎回完全に同一の検査結果を再現することは困難である。

以上の検証結果より、生成AIを決定論的ルールエンジンとして利用することは適切ではないと判断した。

今後、当該種の整合性チェックについては、

  • Excel関数
  • VBA
  • Python
  • データベース制約

などの決定論的処理系を用いることとする。

生成AIは、ルール生成補助、観点整理、例外抽出などの補助用途に限定する。

今回の検証を通じて、生成AIは決定論的なルール判定には向かない一方で、
ルールの整理や例外の洗い出しといった“人の思考を補助する領域”では大きな力を発揮することが分かった。
現場の品質を守るためには、AIと従来の決定論的システムを適切に使い分けることが重要であり、
今後も業務の特性に応じた最適な技術選択を探っていきたい。

※本記事では、AIの特性上苦手とされる処理について技術的観点から説明しています。 Microsoft Copilot は Microsoft 社の製品であり、名称は同社の商標または登録商標です。

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